園だより巻頭言2026年7月号

 毎年恒例となっているバングラデシュの保育を支える旅に行ってまいりました。ユニクロをはじめ、アパレル系の日本企業も多数進出しているバングラデシュは、ついにアジア最貧国から脱したとも言われます。首都ダッカの発展は目覚ましく、日本が建設に携わったメトロ(高架鉄道)が、実際に走っているシーンも初めて見ました。

首都ダッカにできたメトロの高架

 一方、田舎の方にも変化が見られました。キ保同(日本キリスト教保育所同盟)が支援している就学前児童が通うプレスクールがあるのは、首都ダッカから車で5〜6時間南西に下ったシャッキラというエリアのタラという村なのですが、舗装された道路が増えていました。それまでは凸凹道が多かったのですが、実に走りやすい道が増えていたのです。確かに道路が良くなれば農作物を都市部に出荷しやすくなるし、逆に村にも人や物が入りやすくなります。首都ダッカだけでなく、周辺地域も急速に近代化に向かおうとしているようです。

村の市場 お魚は常温で売られています

 今回の旅の途中、1度だけ判断を誤って後悔したことがありました。村の視察と交流をするプログラムの3日目の夕方のこと、幼児や小中学生が100人ほど集まる教会の集会に招かれました。活気溢れる歌や踊り、そして現地の牧師による聖書のお話などで集会は進み、私たちがリードしたみんなで踊るダンスも盛り上がり、やり切ったという充実感で宿舎に戻ろうとした時です。顔見知りの女性が私に向かって「家に立ち寄ってください」と申し出てきました。もてなしを受けると滞在時間が長くなるので、視察団の団長は「もう帰る!」と主張しています。彼女は、それを覆すことができるのはアライだけだと知っていたようです。迷った挙句、暑い中を3日間も視察して回り皆疲れていたことも考慮し、車のドアを閉めてもらいました。別れの挨拶をするために車の窓を開けると、その女性が表現しようがないほど寂しそうな顔でうつむいている姿が目に入りました。その瞬間、わずか20分くらいの時間をなぜ作ってあげられなかったのか、と激しい後悔の念に襲われたのです。でも、車は動き始めました。

プレスクール(幼稚園的なもの)の様子

 100mほど走ったところで、ガイド役だった彼女の夫が「ここが私の家だ」と言い出しました。その瞬間、私は「停めろ!降りるぞ!」と叫んでいました。後続車から降りて来た同行者たちは「しかたないなぁ」という諦めとも安堵とも言えぬ表情をしていましたが、「few minutes!(数分だ)」と告げて門をくぐりました。そこには彼女の家だけでなく、建築中の集会所がありました。海外の支援に頼らない子どもたちの学びの場を造っているとのこと。なるほど、それを私たちに見せたかったのです。それは支援の拒絶ではなく、私たちも頑張っていくから、あなたがたもこれまで通り支えてください、というメッセージなのだと思いました。

歓迎のレイをかけてくれました

 人と人とのつながり、縁の大切さを改めて感じさせる旅となりました。それは理屈ではなく、時間をかけて積み上げて作られるものでもあります。それを一瞬の判断の迷いで、危うく壊しかけるところでした。日々反省です。園長:新井 純

※日本キリスト教保育所同盟のHPはこちらhttps://kihodou.com/